日本酒学概論

【徹底解説!】日本酒度の意味とは|甘口辛口の指標じゃない?

日本酒を選ぶときに、ときどきラベルに記載がある日本酒度。

日本酒度をしっかりと理解すると、

・自分好みの日本酒が酒屋さんで選びやすくなる。
・日本酒の甘口・辛口について説明できるようになる。
・日本酒のお酒としての一生に思いを馳せることができる。

と、あなたの日本酒ライフをより充実させることができますよ!
この記事では、日本酒度に関係することを余すことなくお伝えします。
是非最後まで読んでみてください。

日本酒度とは

酒屋さんで日本酒を選ぶときにラベルに記載があったり、
居酒屋さんで日本酒を選ぶときにメニュー表に載っていることがある日本酒度。

簡単にいうと、「日本酒の中に糖がどれくらい入っているか」を表すものです。

一般的に
数字が+の方にいくほど辛口
数字が-の方にいくほど甘口
といわれ、甘口・辛口の指標とされていますが、これは一部合っていて一部間違っています。

日本酒度の測定方法

日本酒度は、15℃の日本酒に日本酒度計(ボーメ)を浮かべて測定します。
日本酒度計は、4℃の水に浮かべた時にメモリの数値が0になるように作られていて、

水よりも比重が小さい(糖が少ない)日本酒に入れると沈み、
水よりも比重が大きい(糖が多い)日本酒に入れると浮かびます。

このように、日本酒に糖がどれだけ含まれているかで日本酒度が決まります。
では、その「糖」についてもう少し詳しくみていきましょう。

日本酒度における「糖」
日本酒の原材料のお米の成分であるでんぷん。
このでんぷんは、麴菌や酵母の力によって日本酒になる過程で分解されていきます。

でんぷん

デキストリン

オリゴ糖

ブドウ糖(グルコース)

分子の大きさが違いますが、上に挙げたものは全部「糖」です。
分解されればされるほど、甘味を感じやすくなります。
(でんぷん、デキストリンの状態では甘味はほぼ感じず、ブドウ糖はとっても甘い。)

つまりブドウ糖がまだ少なくて、飲んでも甘く感じないが、糖自体は多くて日本酒度は大きく-になるということが起こりえるのです。

これが、日本酒度が甘口・辛口の指標とするのが一部合っていて、一部間違っているといった理由のひとつです。

日本酒度ではなくグルコース度?

そもそも日本酒度は、蔵人さんが日本酒の発酵度合いを見極め、しぼりのタイミングを計るためなどに測定しているものです。
完成した日本酒の甘さを数値化するために測定しているものではありません。

【甘口・辛口】の指標とするには、糖全体の量で決まるものよりも、ブドウ糖(グルコース)の量で決まるものの方が、正確といえるでしょう。

日本酒の中のブドウ糖(グルコース)の量を数値化したものを「グルコース度」といいます。
グルコース度は単純に数字が大きくなればなるほど甘いです。

0.2以下:辛口
0.3~1.0:やや辛口
1.1~1.8:やや甘口
1.9以上:甘口
※酒類総合研究所出典

最近はグルコース度の高いお酒がトレンドとなっていて、全国新酒鑑評会金賞受賞酒におけるグルコース度2.0以上のお酒の割合はどんどん高くなってきています。

日本酒度「以外」の甘辛への影響

日本酒の甘さは糖によってのみ決まるわけではありません。
ここではどのような成分が日本酒の【甘味・辛味】に影響を与えることがあるか、みていきましょう。

アルコール度

アルコールは甘いと感じる成分を微量に含んでいるので、アルコール度が高い方が甘く感じます。しかし、アルコール自体の物理的な刺激を「辛い」と捉える人もいるので、一概にはいえません。

酸度

日本酒に含まれる代表的な酸としては

・乳酸
・リンゴ酸
・コハク酸
・クエン酸

などが挙げられます。
これらは、主に辛味に影響を与えています。
そもそも日本酒に辛味を直接的に感じさせる成分は入っておらず、
酸による味の「キレ」や後味をスッキリとさせるという部分が辛味としての一部となっているといえるでしょう。

アミノ酸度

日本酒に含まれるアミノ酸の種類は約20種類もあります。
それぞれのアミノ酸に甘味・旨味・苦味など味の違いがあり、日本酒の味の奥深さに影響を与えています。一般的にアミノ酸度が高い方が濃醇、低い方が端麗といわれています。

アミノ酸度が高いと、アルコールや酸の刺激を和らげてくれるような効果があることも特徴のひとつです。

吟醸香

カプロン酸エチルや酢酸イソアミルといった成分が代表的である、フルーツの様な華やかな香りの吟醸香も、人によっては甘いと感じるようです。

日本酒度はあくまで目安

このように様々な成分が複雑にからみあいながら、日本酒の味は構成されています。
日本酒の糖に焦点をあてた日本酒度だけでは【甘口・辛口】とは決めつけられないのです。

日本酒度はあくまで甘さの目安。

糖だけでなく、他の様々な成分にも思いを馳せて日本酒の味を想像すると、より楽しい時間が過ごせるかもしれません。